会田誠さんの「犬」を初めて目にしたのは、随分と前のこと、
会田さんの「天才でごめんなさい」って展覧会の目録だった。
確かにショッキングな表現ではあるものの、
その時は、それが問題になるとも思わなかった、
自分もこんな絵描いてみたいな、って思ったくらい。
けど、実際には展覧会に、抗議やクレームやら、
色々あったらしい。
だからという事かはわからないけど、
今になって、ちょっと言い訳っぽい、作品解説の本、
当時の社会、美術界、そして自身の状況、心情、その後の顛末など、
会田さんは、もともと文章が上手い人というのもあるけど、
面白く読めました。
私が、なんで「犬」を問題と思わなかったか、
多分、それが芸術だから、って発想があるからなんだろう、
じゃあ芸術って何?
それはもしかしたら不自然な事かもしれないけど、
エロ的、鬼畜的な視点が無いわけでは無いけど、
それを見過ごすのは、
作者の意図とずれているのかもしれないけど、
例えば、
自分は、定期的に裸婦のデッサン会に参加しているし、
美大の授業で裸婦を描くことも多い。
そこには、一糸まとわぬ全裸女性が色んなポーズをして、
みんなに見られている状況があって、
それって、”普通の”人が考えるに、
とんでもないことのような気もするけど、
じゃあ、そこに性的な要素があるかというと、
全く持ってだ。
作品の制作でいっぱいいっぱいって状況もあるし、
やっぱり、これは美術、芸術だからって、
思いがどこかにあるんだろうな。
(出来上がった作品のレベルは置いといて…)
ただ、これはあくまでも、難しい人体を、
骨格を意識しながらも画面上に再現する、デッサン習得での話で、
これが、こと自身の作品となると話はちょっと違う。
いやらしさを切り離した芸術的なヌードを
作品として作者が求めているかは大いに疑問だし、
そんなつまらないもの誰がみたがるのか、
まあ、見る方も心の奥底で求めてるものは違うかもしれないしね。
その辺りの心情やら、世間の捉え方やらが
色々と参考になった一冊でした。